白内障手術で起こりうる と について解説します。
術中合併症
1.後嚢破損
水晶体後嚢を超音波乳化吸引時に誤吸引し、後嚢を引き裂くことで生じます。
対処法
創口に硝子体が陥頓した場合には、硝子体切除を行います。
眼内レンズは嚢外固定、もしくは後日逢着術になる場合もあります。
2.核落下
水晶体後嚢破損後に水晶体核が硝子体内に落下する状態をいいます。
対処法
落下核が1/4以下であれば自然吸収を期待し経過観察とし、残存核が大きい場合には硝子体手術にて除去します。
3.虹彩脱出
不完全な切開創、浅前房(閉塞隅角緑内障など)、弛緩した虹彩(IFIS)、落屑症候群、糖尿病などで、切開創から虹彩が脱出する状態をいいます。
対処法
脱出虹彩を戻し、切開創を縫合後、新たな切開創を作成し手術を続行します。手術翌日に認めた場合には、再手術によって虹彩を切除する場合もあります。
4.infusion misdirection syndrome(IMS)
白内障術中に目の中に潅流させる潅流液が硝子体腔に回ってしまい、水晶体が虹彩を押し上げるようになり、前房が浅くなってしまう状態をいいます。
対処法
手術の設定条件を変更することで手術を続行することができます。
5.創口熱傷
硬い核の白内障の場合に、超音波出力の増加や超音波時間の延長に伴って創口の熱量が高まることで、熱傷が生じ、創口が変形することをいいます。結果、切開創の閉鎖不全が生じてしまいます。
対処法
手術中に創口の縫合が必要になります。
術後合併症
1.術後眼内炎
術後の眼内細菌感染で生じます。発生頻度は0.5%(2000例に1例)。
白内障術後眼内炎はほとんどが術後1週間以内(術後2~3日がピーク)に発症します。しかし、22%が術後1ヵ月以上の晩期発症です。晩期発症は、術後2~10か月の発症まで報告があります。
対処法
早期発見、早期治療が原則です。抗菌薬の硝子体注射もしくは硝子体手術が適応となります。
2.後発白内障
眼内レンズの後面に接する後嚢に混濁が生じることによって、あたかも白内障のように視力低下を自覚する状態をいいます。術後5年で約20%の症例に発症します。
対処法
YAGレーザー後嚢切開術で視力を改善することが可能です。
3.眼圧上昇
術後に眼内圧が上昇することをいいます。緑内障眼、後嚢破損例、その他術後炎症、粘弾性物質の残存、ステロイドレスポンダーなどがいろいろな原因が存在します。
対処法
点眼、内服にて眼圧を下げます。
4.屈折誤差
術前に予定していた屈折値(遠視や近視の度数)が、術後に誤差を生じる状態をいいます。
最新の光学式眼軸測定装置であっても約5%には誤差が生じると言われています。
対処法
通常は眼鏡による補正、場合によっては、眼内レンズの交換、RK,エキシマレーザー屈折矯正術などがあります。
5.眼内レンズ偏位
白内障手術後に挿入した眼内レンズの位置がずれてしまう状態をいいます。原因は後嚢破損やチン氏帯断裂などの術中トラブルによるものと、術後の前嚢収縮に伴うものや外傷などがあります。
対処法
ピロカルピン点眼、再手術による眼内レンズの位置補正、状況によっては眼内レンズの逢着が必要な場合もあります。
6.黄斑浮腫
手術後2-4週目に黄斑の水膨れが生じ、視力低下を生じさせます。手術による機械的損傷が網膜血管の透過性を亢進させ、黄斑浮腫の発症につながります。
対処法
点眼治療、硝子体注射、改善しない場合には硝子体手術も行う場合があります。
7.前嚢収縮
前嚢切開による前嚢切開窓が、術後3ヵ月くらいまでに強く収縮したものをいいます。
対処法
かすみの自覚や眼底治療の必要な場合に、YAGレーザーによる前嚢切開術が施行されます。
8.角膜内皮障害
角膜内皮細胞障害は、術前から存在するものや、術中、術後に障害されるものまであります。
対処法
角膜内皮保護対策を行うことや、手術侵襲の少ない手術で対応します。
9.水泡性角膜症
術前から術後にかけて角膜内皮障害が存在する症例で、手術侵襲が原因で生じるものです。
対処法
原因の除去、角膜内皮移植術、角膜全層移植術などがあります。